すずらんとナイフ



テーブルの上に置きっぱなしだった自分のスマートフォンの位置が、微妙に違う事に。


勇希からの連絡が来たら、すぐに分かるようにテーブルに置いたままにしていた。

不思議に思いながらも、気のせいだと思う事にした。



「私、離婚したんだ」


史歩がピザを一切れつまみながら、
唐突に言った。


「えっ?本当?いつ?」


すずはシーザーサラダを取り分けながら目を丸くした。


「二年前。22歳の時、結婚したんだ。
子どもはいないよ」


「そうだったんだ…」


すずは、取り分けたシーザーサラダの皿の一つを史歩の方へ寄せた。


「前の苗字、カワギリっていうのよ」


「カワギリ…」


すずがつぶやいた時、すずのスマートフォンが鳴った。


勇希からの電話だ。


帰国子女の勇希は、用がある時はメールを打つより電話をしてきた。


「ちょっとごめんね!」


すずは慌ててスマートフォンを手に取り、立ち上がった。

携帯を耳に当てたまま、
化粧室へ移動する。