ロッカーを開けた途端、すずは飲みに行く約束を後悔した。
ジーンズを履いてきたの忘れていた。
ジーンズで飲みに行くのがあまり好きじゃなかった。
(いいや、史歩だし…)
髪もお団子にしたまま、行くことにする。
「私、準備出来たよ」
ロッカールームの別の場所で着替えていた史歩がすずのそばにきた。
(ええっ!?)
すずは史歩の私服を見て、仰天した。
スカート丈がものすごく短かった。
同性から見ても、ドキドキするくらいの短さだ。
(これじゃあ、ちょっと屈むことすら出来ないじゃない…)
史歩の脚は、すらっと長くて見事な脚線美だったけれど、芸能人じゃあるまいし27歳でこれはない…とすずは思った。
そのスカートも黒地に赤いバラという、すずには絶対信じられない柄だった。
夜会巻きにした茶髪には、大きなラインストーンの並んだピンを付けていた。
史歩はいつもこの夜会巻きでレモン色の制帽を被る。
(やだ…戦後の娼婦みたい…)
すずは思った。
(まあ、少し飲んで帰るだけだし…)
そう思いながら、ジーンズのジッパーを引き上げた。