すずは、この旅行のためにミッドナイトブルーのシフォンのミニドレスを新調した。

そのプリーツがたくさん寄せられたドレスを着て、ライトアップされた誰もいないプールサイドを勇希と散歩した。


暗がりで勇希とすずは顔を近づけ、鼻を寄せ合った。

二人は微笑み合う。


「…すずは綺麗だ……」


勇希は潤んだ瞳で、すずを見つめた。

そして、左手ですずのサイドの髪を掻き上げ、首筋にキスをした…


本当に夢のような3日間だった。


(ああ、時が止まって欲しかった〜)


宮古島での出来事を思い出すと、すずは体が熱くなってしまう。

持っていたグラス磨きのクロスで自分をヒラヒラと扇いだ。


「すず、お土産、有難う!
パイナップルケーキ美味しかったよ」

史歩が話し掛けてきた。


「どういたしまして。
ちょびっとでゴメンね」

すずは微笑み返した。
行く前は、皆に宮古島に行ったのを内緒にするつもりでいたけれど、思い直した。

宮古島土産にパイナップルケーキを二箱買い、

【食べてください。三浦☆】
とメモをつけて厨房に置いていた。



午後4時半。
他のコンパニオンは既に4時であがり、すずと史歩は二人だけで、ラウンジの後片付けに入った。


「ねえ、すず!」

史歩が、すずの肩に軽く触れながら言った。

「仕事のあと、ヒマ?今日金曜日だし、飲みに行かない?
私、ずっとすずと飲みに行きたかったんだ」


一瞬、すずは迷う。

……なんて断ろう。


でも、気が付くと口が勝手に
「いいよ…」と言ってしまっていた。