午後2時までで矢崎は帰った。
夜間の服飾デザインの学校に通う彼女は、
「これからちょっと寝てから、学校行きます」と、はにかんで笑った。
19才の矢崎は、すずを慕ってくれた。
「三浦さん!私、今、課題でウェディング用の髪飾り作ってるんです。上手く出来たらプレゼントしますね」
と可愛いことを言う。
(ウェディングかあ…
一年後くらいに出来たらいいなあ)
すずはトレイに味噌汁の腕を並べながら
考える。
(そしたら、ラウンジは辞めないとね。
当たり前だけどー)
コンパニオンが社員と付き合うのは、いいことではない。
それは暗黙のルールだった。
社内ラウンジは、商談の場だ。
時には、社運を左右するような厳しい
取り引きの場にもなる。
社員がコンパニオンの女性を気にするなど、ありえない。
すずと勇希は前代未聞のケースだった。
だから、理香以外には、勇希との交際を知られるのは、絶対に避けなければならなかった。