すずらんとナイフ



「三浦さん」


ラウンジから渡辺の、すずを呼ぶ声がした。

「はーい」


『渡辺君が10時に新入りのコンパニオンを連れて来るから、よろしくね』


今日こ朝礼の後、理香がそう言っていたことを思い出す。


すずが急いでラウンジに出ると
渡辺のそばに「ヒヨコルック」を着た
背の高い若い女が立っていた。


「……あっ!」

すずは思わず、女を指差した。


「史歩、加藤史歩じゃない?」


「えっ?」

女は目を見開いた。

「三浦さん?」


すずは、うわあ!と思わず声を上げた。


「何、二人は知り合い?」


渡辺が訊いた。


「そうなんです。加藤さんと同じ高校だったの。
一年の時、同じクラスだったの!」

答えながら、すずは
(全然、仲良くなかったけど)という言葉を飲み込んだ。


史歩は何も言わず、決まりの悪そうな顔をしていた。

こんな場所で昔の同級生に会うなどと考えていなかったのだろう。


学年で一、二を争う美少女だった史歩。

でも、彼女は決して人気者ではなかった。