とここで青年の目が見開かれる。日系人としては珍しい藍色の瞳が、イリスを強く射抜く。


「『ディクゼリア』ってあの武力主義国家か。核兵器を最初に造り出したのもディクゼリアって聞いたぞ。今は……何だったかな」

「人造兵器。サイボーグよ」

「ああ、それそれ。ったく人の体いじってまで何がしたいんだか……悪い。お前の故郷だったな」

「別に、気にしてないわ。全くもって同意見」


 イリスの素っ気ない返事に、氷衣はほっと息をつく。こんな事で仲が悪くなるのは後味が悪いとの考えだ。


「じゃあこれでお互い知り合いだな」


 青年の陽気な声音。言い返そうとしたイリスだったが、彼の生々しい包帯姿を見て、遠慮がちに押し留まる。


「……まあいいわ。そういう事にしておいて」

「おう、サンキューな。今度何か奢るよ。でも良いのか? そんなに自国の事話して。国家機密とかじゃ」

「だってあなた知ってたじゃない。私の国は情報の漏洩程度で困ったりしないもの」

「……お前の国ってホント凄いよな。じゃあイリスがやったさっきのやつ。あれも――」

「《暗殺乱舞(インビジブルレイン)》。私のドクターはそう呼んでいたわ」

「ドクター? やっぱりあんた体を……」