絶命した死体達の奏でる、コンクリートとの衝突音。そのあまりの生々しさに、数々の死を目撃してきたハズである軍人達の眉が、不快に歪んだ。


 ――と。


「……が、は」


 一人。
 体格の良い青年が、大剣を杖のように構えて棒立ちしていた。彼のみ、首は斬られていなかった。その代わり、全身に浅く走る切り傷がある。


 シャツやジーンズは無惨にも破れ、今にも気絶しそうな状態だった。


 暗がりでも分かるほどに生気を失ったブラウンの瞳が、返り血を浴びていない少女の姿を射続ける。
 少女は青年に体を向けた。しかし、フードの影に隠れて素顔が見えない。


「くっ……」


 すぐに男は体制を崩した。大剣が床に倒れ、高い音が響く。血溜まりとなった床の上に、男の横顔が浸された。


 ――戦闘不能。


 戦闘開始からわずか十分。
 九時間と五十分の時間を残し、戦闘終了のホイッスルが鳴り響いた。


 およそ百名の精鋭が一人の少女によって、わずか十分で殺害された。血の池と死体でできた絨毯でデザインされた、不気味な地下室の中心。再び不動のオブジェクトと化した少女の立ち姿は、軍人達の目に異様な光景として焼き付いていた。