「凄かったよあれ。3回ぐらいゲームのキャラみたいにジャンプしただろ!」

「こんな遠くからよく見えたな」

「この双眼鏡だよ。明日はイノシシ狩りなんだ。それで滑山を眺めてたらピョンピョン跳んで山から下りてくるオッサンが見えてさ。もう可笑しくって」

「そいつは結構だったな。それよりイノシシはどうやって追い詰めるんだ?」

「オフロードバイクさ、あそこに止めてあるのが俺んだ」

彼が指図した方に目を向けると一台のバイクが駐車していた。あれは良い!私の車では滑山を登れないが、あのバイクなら大丈夫だ。

「君に頼みがある。今から滑山の中腹まで、あのバイクに乗せてくれないか?金なら出す」

「金なんかいらんよ。往復で乗せてやるよ。イノシシ狩りの仕掛けをするつもりだったしな。そのついでだ」

「ありがとう助かる。だが、片道たけでいい。帰りは徒歩じゃないと」

「なんで?」

「あそこにはさ、人見知りの女王様がいるんだ。もし君を連れていったりしたら、私たぶん殺されるよ」

彼は浅黒い顔に緊張した表情を浮かべる。明日のイノシシ狩りが心配なんだろう。