「それじゃ、私が何か買ってくるからここで待ってなさい。1時間ぐらいはかかるよ」

「それでいい。オジサン…警察とか救急に連絡したら殺すからね」

「はい」

娘さんは、その愛らしいドングリ眼を猛禽類が補食する時みたいに光らせ私を睨む。

これは大変な事に巻き込まれてしまった。しかし、娘さんがエサを求めるているのでは仕方あるまい。私はツバメがエサを追いかけるがごとく猛スピードで山を駆け降りる。

足はガクガクし、息切れが止まらない。地面から盛り上がった木々の根っこに足をとられ、体ごと中に舞うこと3回。ようやくふもとのコンビニに到着した時には私の体力はヘロヘロであった。

「スタミナドリンクでも飲まないともう登れないぞ。こんなに疲れたのはガラパゴス諸島で10匹以上の陸イグアナに追いかけられたとき以来だ」

今にも倒れそうな私を見て、ひとりの若い男が近づいてきた。キリンか?背が高すぎだ。

「あの滑山から下りてきたのはオッサンか?」

彼は滑山を指差しながら私にそう尋ねてきた。口もとは今にも大笑いするのを我慢している様子。

「そうだが」