「まさか!それはないでしょ」

『教授、沖縄に行ったときのことを思い出して下さい!暴漢に襲われてる女性を助けた後どうなりました!』

「女性は消えて、恐いお兄さんが治療費として80万を請求してきました」

『そうでしょ!だから今すぐ下山し…プー!プー!』

あっ!また切れた。携帯の液晶画面を見ると電池切れの表示。

「こいつは、まいったな」

そんな時、不意に自分の足首を掴まれる感触を覚えた。

「うん?」

「オジサン誰と携帯してるの?警察は止めてよね。面倒はイヤよ」

私の足首を掴んだのは娘さんの小さい右手だった。どうやら私と田中君との会話で目覚めたらしい。

「警察じゃないよ。それより大丈夫かい?」

「お腹空いた。なんか食べたい」

「あいにく今は何もないんだよ」

「使えないな」

「下山すれば、ふもとにコンビニはあるけど、そこまで歩ける?」

「ムリ」

「それじゃ、私が担いでふもとまで歩いてあげるから」

「絶対ムリ!知らない人とカラダを密着させるなんて」