茶髪に小柄で細い肢体。彼女は衰弱している様子で、その姿はまるで、巣にいるヒナ鳥が、カッコウのヒナに蹴落とされ、地面に横たわっているかのように見えた。もしかしたら私はえらいものを見つけてしまったのかもしれない。

『グァー!ゴアーッ!グァー!ゴアーッ!グァー!ゴアーッ!』

この品のない鳴き声は娘さんの寝息だったのか。このまま放置して下山はできない。どうする?

そうだ!困った時は助手の田中君に聞いてみればいいんだ!携帯、携帯は…あった!

『はい美沙子ですけど、こんな早朝から携帯だなんてどうしたんですか岩井教授?』

「ちょっと困った状況に陥ってるんだ。それで助けて欲しい」

『岩井教授…。昨日、研究室で言いましたよね私。今日はお見合いだって』

「そうだった?」

『そうですよ!』

「まあ、それは別にいいんだけど、助けてくれないか」

『……』

あっ!切れた。どこでも使える携帯のはずなのに不思議だ。リダイアル、リダイアルと…。