近づいてくる顔が。
まるでドラマのワンシーンのようにスローになる。
ドクンドクンと。
私の心臓の動きが激しくなっていく。
私だってもうオトナだ。
ここまでされて、この先何が待っているか、なんて。
わからないはずもない。
イヤなら逃げればいいのに。
逃げられない。
あと8センチ。
「…拒否んねぇの?」
あと5センチ。
「拒否んないなら、するよ?」
あと3センチ。
「目ぐらい閉じろって」
動いたら触れてしまいそう。
ほんの少し開かれた薄めのヤツの唇からは。
それ以上言葉はなくて。
私は。
開いていた目を閉じて。
羽織っていた白衣の袖をギュッと握った。
それとほぼ同時。
柔らかい感触を唇に感じた。