普通の高校の体育館にひけをとらないほど、広い広い職員室のフロア。


100をゆうに超える、ものすごい量の机から、お目当ての先生の机を捜索する。


教室には非常灯がないから、各自携帯電話のライトや、持参してきた小さな懐中電灯を使うことになっているが、いかんせん広い。



「思ってたよりずっと難しいんじゃないか?これ…」


教室入り口の座席表はちゃんと確認した上で探してるんだが…。このあたりのはずなんだけどなァ。



「あったか、大吾?」



いくつか隣の列を歩くユウ先輩が尋ねてきた。先輩もまだ見つかってないみたいだな。



「まだです。机すら見つかりませんね」


「他のみんなもそうみたいだ。そろそろ警備員たちも動き出す。急がなきゃな」


そう言って、ユウ先輩は再び机探しに戻った。


辺りをぐるりと見回すと、遠くでポツリ、ポツリと実動班の人影が動くのが見える。それほど広い。そして暗い。時間もない。



「とにかく探さなきゃな…現国が浅井さんで、古典が岩田さん…アサイ…イワタ…」



ん?

おっ…。

あ、あった!

“浅井”と書いたプレートが、整然と片付けられた机の上に置いてある。


間違いない。2年の現国担当の浅井先生の机だ。


しかも。


なんか分厚い封筒がそのまんま机の上に置いてある!!


「こ、こちら大吾。現国のテスト用紙らしきものを確認しました」


無線機で全員に通信する。

「えっ!」
「マジか!」
「やった!」


数メートル離れたところで3兄弟が反応した。



“こちら啓一。ひとまず用紙を確認して”



言われるままに、ライトで封筒を照らす。



“期末考査・現代国語・担当・浅井”



ビンゴ。



「間違いない。テスト用紙だ」



“オッケー。分かってると思うけど、取り出すのは1人分だけだよ。たくさん盗むとバレちゃうからね”



「おう」



幸い封筒がのり付けされていることもなく、スルリとテスト用紙を2枚1組、簡単に取り出せた。もう一度ライトで照らして確認するが、間違いなく現国のテストだ。



「ラッキー。この調子で岩田さんの古典も…お?あれ?」



浅井さんの隣の机の上にも、同じように分厚い封筒が。


まさかとは思うが。


プレートを確認。


“岩田”


うわぁ…。
ラッキー。