放課後。



健全な生徒の多くは、部活動で汗を流す。ちなみに人数が多い分、うちの学校の運動部は強豪揃いだ。



俺は、麻雀部所属。
掃いて捨てるほどある教室のひとつを陣取って、麻雀にいそしむ部活である。
もちろん非公認。
まァ、確かに賭博性の高い麻雀なんかを高校の部活としては認められないだろうな。

マンガじゃあるまいし。



4500人が通う超マンモス校ともなれば、校舎の大きさもうかがい知れるだろう。



長い長い廊下をひたすら進んで、階段を上がったところに3年K組の教室がある。



「ちわー」



扉を開けると、机をふたつくっつけたものを土台に、即席の雀卓が計2台。



「おっす」
「ちわーす」
「お疲れぇ」



気だるそうな挨拶が返ってくる。



今日来てるのは雀卓を囲ってる4人だけか。俺を含めて5人。ま、これから下校時刻までには10人くらいに増えるのがいつもの流れだけど。



「今始まったとこ。半荘だからしばらくかかるぞ」



そう言って俺の方を振り返ったのは、3年K組の中村悠一(ナカムラ・ユウイチ)先輩。ユウ先輩だ。



ルールを知らない方に説明させてもらうと、麻雀は基本的に4人で行うゲーム。だから俺は余りなのだ。



それから、どうでもいいが半荘ってのはゲームの長さ。短期戦が東風(トンプウ)、長期戦が半荘(ハンチャン)。



「あ、良いですよ。反省文書かなきゃいけないんで」



今日1日、授業中にコツコツ書き溜めた反省文だが、なにせいつもの6倍だ。まだ半分程しか書けていない。



期限は明日の昼休み。この時間に書き終えてしまうのが良いだろう。



「反省文?また?」



2年M組の新立進(シンダテ・ススム)が、眉をひそめて俺を見た。



「また遅刻でしょ。今朝大吾先輩が走って来るの、窓から見えましたよ」



1年W組の杉山直紀(スギヤマ・ナオキ)は雀卓を眺めたまま。バカにしたようにくすくす笑っている。



「5日連続は、反省文が6倍になるらしいよ」



最後のひとりは啓一だ。2年C組、永野啓一。俺の隣の席の、いわゆる“準バカ”だな。



とはいえコイツが“バカ席”にいるのは成績に反映されないテストのときだけなのだが。なんか腹立つ。