「よい子はマネするなよ」


ユウ先輩はにやりと笑うと右手をぱっと開いて、窓の下の空間をきゅっと握り締める。



「なんだ、何かするのか?」


タケシ先輩が訝しげに尋ねる。



「『開け、ゴマ!』なんつって」



直紀がからかい気味に茶化す。バカのクセに。


他のメンバーも総じて「?」って顔で、ユウ先輩の不思議な行動を見守る。


俺も「?」って顔で見守る。


「杉山も、あながち間違っちゃいないぞ」


そう言ってユウ先輩は、空を握った右手をクイッと真下に引き下げる。



カチリ。



『おーっ!』



メンバーから小さな喚声が沸き上がる。内側から掛けられた鍵が、ユウ先輩の下げる右手に合わせてカチリと開いたのだ。


「夕方のうちに準備しといたのさ」


よくよく目を凝らして見ると、ユウ先輩の右手には、何やら細い糸のようなものが巻き付いている。



「ピアノ線さ。鍵のフックに結んでおいて、窓の隙間から外に出しておいた。外から引っ張れば開くようになってる」



どこでそんな技術身に付けたんですか、あなたは?



「通信教育だ」

「は?」

「冗談だよ。おーい、新立、開いたぞ」



ザザザッ。

“了解。じゃあ、さっき言った通り、2分おきに2人ずつ潜入してください”



ノイズの混じった進の音声が、無線機から聞こえた。


“健闘を祈ります”

“ぐっどらっくです!”


啓一とユウキちゃんのエールも受けて、まずは俺とアリサが開いた窓をこっそりと飛び越える。



ん?
何で俺とアリサがペアなのかって?



くじ引きだよ、
くじ引き!