3人で怪しげにヒソヒソと相談しているところに、ユウ先輩が割り込んできた。


「コラ。何企んでるんだ?」


「いや」
「別に」
「何も」


俺と、進と、直紀で順々に誤魔化すと、ユウ先輩は「まったく…」とため息をついた。



「挨拶くらいしないか。失礼だろ」



ユウ先輩に促されて、進と直紀は慌てて先輩の隣に立っているアリサに向き直った。



「2年M組の新立進です。“新しく立つ”と書いてシンダテ、“前向きに進む”のススム。ヨロシク」



なんだその自己紹介。



「C組の泉アリサ。“湧き出る泉”のイズミに、カタカナでアリサよ」


お前も乗るのかよ!
アリサはそんな自己紹介するほど複雑な名前じゃないのに!



「俺、杉山直紀ッス!“杉田かおる”のスギ、“山田花子“のヤマ、“素直”のナオに、“ジュラ紀”のキ」


分かりにくい!逆に分かりにくい!



「大吾先輩はやらないんですか?」

「やるか!あほくさい」



曲がりなりにもクラスメイトだ。自己紹介の必要なんてない。



「えっと、“変態”と書いてヒビノダイゴ君よね?」

アリサ、一言いいか?
ふざけんな!



「“覗き魔”と書いてヒビノダイゴじゃなかったか?」

「いや、“最バカ”と書いてヒビノダイゴですよ」



この悪ノリは無視しよう。下手に突っ込んでもケガするのはこっちだ。



「泉には実動班でミッションに参加してもらうことになった」


「え!?」


ユウ先輩がさらりと放った言葉に、俺は思わず聞き返した。


「アリサが、実動班?ミッション参加?」

「なんだ、まずかったか?」

「や、その、アリサは麻雀部じゃないし、いいのかな、と」


俺がもごもごと返答すると、ユウ先輩はハハ、と声を出して笑った。



「公式な部じゃないんだ。別に構わないだろ。泉は東條の友達だし、友達を助けたいという気持ちは、大切にするべきだ」


友達ね。東條さんとは喋ったことないって、ちょっと前に言ってなかったか?オマエ。



「ヨロシクね、大吾」


そんな笑顔で俺を見るんじゃない。


あぁ、前途多難だよ、このミッション。