「アリサって、お前の天敵で毒舌家の泉アリサ?」



進が興味ありげに尋ねてくる。



「そうだよ。ヘタに断って東條さんにミッションのことバラされると都合悪いし、ユウ先輩に相談しようと思って」


「厄介な女だな、そりゃあ」



進は雀卓のところまで戻ってきて、直紀と一緒に牌の整理を手伝った。


「ユウ先輩の分も作っちゃいます?」

「そうだな、山まで作っとこう。大吾もやるだろ?手伝えよ」


「ああ」



俺も雀卓に歩を進めて、牌をカチャカチャと順序よく並べていく。



と、丁度教室の扉が開いて、ユウ先輩が顔を出した。


「おう、日比野」

「チワス。ユウ先輩、ちょっと相談が」

「相談?」


俺の言葉を聞いたユウ先輩は、驚いたようにぱっと表情を変え、考え込むように右手を自分の額にあてて、苦笑いを浮かべた。


「あー、相談って、もしかして『コレ』か?」


「げっ…」



俺の目線の先、苦笑ぎみのユウ先輩が真後ろを指差すその空間からのぞかせたのは、茶髪のショートヘアー。


「来ちゃった」



相性最悪の天敵、泉アリサの燃え上がるような殺人スマイルだった。ちなみに死ぬ可能性があるのは俺だけだ。



「オマエ…!俺が頼んどくから今日は帰れって言ったじゃないか!」


「ユウ先輩って来てる?どうせなら直接会って話を聞きたいんだけど」


俺の抗議を完璧に無視した上で、俺に質問してくるなんてな。なんという図太い神経をしてるんだ、コイツは。



「…そのヒトがユウ先輩だよ」


そう教えてやると、アリサは「えっ」と呟いて、ユウ先輩の顔を後ろからのぞき込んだ。



ユウ先輩は「おっ…」っと驚いて、困惑ぎみに少し身体をのけ反らせた。



「泉アリサです。日比野くんと永野くんとは同じクラスで、いつも仲良くさせて貰ってます」



よそ行きの口調と表情で、アリサが自己紹介した。聞き捨てならない台詞が紛れ込んでたな。日比野くん?いつも仲良く?



「あー、その、そうか。中村悠一だ。よろしくな」



どことなくユウ先輩が動揺してる。さすがはユウ先輩。ヤツの危険度をなんとなく察知したみたいだな。