「予習とか無駄。今まで先生が俺たちを当てたことが何回ある?“バカ席”の俺らに当てたって、話が進まねぇからな。なァ、啓一?」



「古典の岩田先生は、“バカ席”中心に当ててるよ。いつも“バカ席”2列は全員立たされっぱなしじゃないか」



「げ、そうだっけ?」



「また“最バカ”が、そのバカさを露呈したわね。死ねば良いのに」



「アリサぁ、そういう悪口は聞こえるように言うもんじゃないぞ。本人の前では特に」



「そうだよ泉さん。第一、大吾が死んだら僕が“最バカ”になっちゃうじゃないか」



「…啓一、フォローになってないぞ。むしろそれも悪口の種類に入る」







そうなのだ。



“クラス首席”の隣の席なんて、夢のまた夢のまた、

そのまた夢の夢なのだ。



“最バカ”の俺にとっては。








ところが、である。



前フリにしては長すぎたかな。



「仕方ない。これを使うか。じゃあん、『ハイパー教科書ぉ~』」



「わ!大吾ずるいぞ、教科書ガイド!」



「“虎の巻”は校則違反よ。先生に通報して、クラス中の笑い者にしてやるわ。そしてそれを苦に死ねばいいわ。目障りだもの!」




正直、笑い話にもならないショボい物語なのだが。



“最バカ”の俺が、



“クラス首席”の隣目指して奮闘することになるなんて。



「態度次第では見せてやらなくもないぞ」



「大吾、今日の購買は僕に奢らせてくれないか」



「大吾くん、前々から思ってたけど、いい声してるわね。顔も悪くないし。学力に振り分けるべきパラメーターポイントを整った顔と美声に振り分けてしまったのね、きっと。不憫でならないけど、死ぬほどのことじゃないわ。早まらないで」



「アリサ、お前にしては頑張ったと思うが、誉め言葉の中に悪意がちらちらと垣間見えるぞ」







本当に、思ってもみなかった。



これは、
そんな“最バカ”の物語。