あの子の隣に座るコツ!

「“準バカ”ですか…テストまでもう3週間もないし、大変じゃないですか」



離れた雀卓でユウキちゃんに麻雀を教わっていた直紀が、口を挟んだ。



「“バカ席の”中でも下位の方は、折り紙つきのおバカさんですからねぇ」

「…聞こえてるぞ、ユウキちゃん」

「あら。失礼しました、大吾先輩っ」



冗談はさておき、“準バカ”ってのはクラスで“最バカ”の次に成績が悪い、凄まじいバカだ。



いや、分かってる。“最バカ”の俺が言うことじゃあないけどさ。



正直言って“準バカ”が3週間の勉強で“バカ席”の上位まで成績を上げられるのか、大いに疑問だ。



あ、啓一は例外だぜ。

あいつは“準バカ”の地位には好きでいるだけで、本来の学力はかなりのものだ。次の期末試験は今よりずっと上の順位につけるだろうけどな。



「いいか、ベンチ入りメンバーの選考対象から外されるってのは、物凄い屈辱なんだぞ!」



必死に説得を続けるタケシ先輩。



「“メンバーに選ばれない”んじゃない!“選考対象から外される”んだ!審査すらされないんだぞ!最後の試合がこんな形で終わっちまうなんて、俺には耐えられねぇっ」


「タケシに勉強教えるの、疲れるんだよなァ」


めんどくさそうな口調でユウ先輩がぼやいた。この言い方だと、前にも何回か勉強教えてるのかな。



「そこを何とか!お前以外に頼れるヤツがいねぇ。“秀才席”のヤツらの中でまともに話せるのはお前だけなんだ」


「社交ダンス部に入ったらどうだ?そこで社交性を身に付けて、“秀才席”でまともに話せるヤツを増やす」


「にどでまっ!」


どうやら、マトモに取り合う気はカケラもないようだ。ま、仕方ない。ユウ先輩も3年だし、受験生だ。他人(ヒト)の成績に構ってなどいられないんだろうな。



「タケシ先輩、とりあえず麻雀やりましょう」


「お、おう、大吾か。お前からも言ってくれよ…」


「気持ちは分かりますけど」


「同じ“バカ”として?」


「黙ってろ、啓一。とにかく、頑張ってみましょうよ。順位が上がれば“バカ席”の上位にはあがれなくても、頑張りが認められるかも」



俺がそう言うと、タケシ先輩は小さくハァ、と、ため息をついた。