あの子の隣に座るコツ!

なんとなしに議論が行き詰まった、その時。



「悠一ぃっ!」



ドスの利いた、しかし頼りの無さげな声とともに、教室の扉がガラリと開いた。



俺が視線を移したその先。坊主頭の大男が、同様に坊主頭の子分らしき男子生徒を3人連れて、麻雀部に乗り込んできた。



安心して欲しい。彼らは暴漢でもなければ、道場破りでもない。



3年K組、権藤剛志(ゴンドウ・タケシ)と、その子分、2年生の井上、尾崎、水谷。れっきとした麻雀部員である。



この4人は正式には野球部の部員。週に1度、練習のない日に麻雀部に顔を出しに来るのだ。



「よう、タケシ」


ユウ先輩が軽く右手を挙げて合図する。



「悠一、勉強教えてくれ!頼む!」



開口一番、タケシ先輩は大きな体をぐわっと前に倒して、頭の上で手を合わせた。



「お前に勉強教えるヒマなんて1秒もない」

「ひどっ!」



懇願するタケシ先輩をユウ先輩はあっさりと、かつバッサリと斬り捨てる。



「そこを曲げて!頼むよ、クラスメイトじゃないか!」


「クラスメイトなだけで勉強教えてたら、体がいくつあっても足りないよ」



今にも土下座しそうな勢いで体勢が低くなっていくタケシ先輩だが、ユウ先輩は相変わらずめんどくさそうに牌を俯瞰(フカン)している。



だんだん可哀想になってきたぞ。



「ね、どうしたの?タケシ先輩」



啓一が、子分の3人に尋ねた。



「監督の方針で、次のテストで“バカ席”の上位以上に入らないと、夏の大会のベンチ入りメンバーの選考対象から外されるんだって」



子分その1、井上が説明した。



「それはそれは。必死になるわけだ」


あきれ声で進が言った。3年の最後の大会に出れないとなれば、さすがに大事件だろうな。



「で、なんだ。そんなにヤバいの?タケシ先輩の成績は」


俺の問いかけに答えたのは、子分その2、尾崎。


「“準バカ”だよ。相当ヤバい」

「野球部は総じて成績良くないけど、3年生で“準バカ”はタケシ先輩だけだ」


子分その3、水谷も言葉を繋いだ。