あの子の隣に座るコツ!

「無線で答えを教え合うのはどうでしょーね?」


次に挙手したのはユウキちゃんだ。


「あァ、悪くないんじゃない?」


啓一が牌を切りながら、賛同の声を上げた。


うーん、無線の調達費とか、バカにならないんじゃないか?


「ケータイで代用できないかな」


今度は進が発言した。コイツはかなり冗談半分のようだが。


「でも、無線と違ってケータイは1対1でしか使えませんよね」


直紀が珍しくマトモなコトを言ってるな。今日は傘を持ってきてないぞ。


「僕のケータイは登録すれば一斉通話できるよ」



啓一が自分の携帯電話を取り出して、ディスプレイの【みんなでトーク】というアイコンを指差した。


携帯会社のネーミングセンスはどうなってやがるんだ。


「一斉通話機能付きのケータイを持った“秀才席”の連中が、一体何人この企画に乗ってくれるだろうな」


ユウ先輩の指摘は的を得ている。“秀才席”の奴らなんて、「勉強の虫」と言える人間がほとんどだ。こんな作戦聞いたら多くのヤツは怒り出すだろう。



不正を働いて自分達よりいい成績をとろうとしているわけなんだから。



最悪の場合教師にチクられて停学か反省文か…どちらにしろまともに動けなくなるのは確かだ。


「いいセンいってたけど、波多野の案も却下」



トン、カチッと軽快な音を響かせて、ユウ先輩が牌を切る。何か楽しんでませんか、先輩?


「むー、難しいですねぇ」


腕を組んで、首をかしげるユウキちゃん。この子も多分遊び半分だ。


ていうか、本気なのは俺だけか!


「東條さんの隣の子と、大吾の答案を交換するってのはどう?」


今度の提案は啓一。


「どうやって俺の答案と東條さんの隣のヤツの答案を交換するんだ」


「クラス委員が最後に答案の名前を確認するじゃない。購買か現金か、とにかく買収して名前を書き換えてもらえばいいんだよ」


「…今まで“最バカ”だったヤツが急に“クラス次席”になって、“クラス次席”だったヤツが急に“最バカ”になったら、いくらなんでも怪しいだろ」


進が冷静に反論した。そりゃそうだ。終わってみれば、名前を交換したことなんて誰にでもわかる。筆跡の違いもあるし。



「うん、永野案も却下。目の付け所は悪くないがな」


ユウ先輩、完全に楽しんでるな。こっちは結構本気(マジ)だってのにさ。



まァ、現状打つ手はなさそうなのだが。冗談にしたってもうちょいリアリティーのある案を出して欲しいものだ。