あの子の隣に座るコツ!

結局、東條さんについて洗いざらい話すのは、俺の役目だった。


石川のセクハラから東條さんを守るため、ヅラ疑惑を武器に牽制。昼休みと放課後の安全確保。


残りのミッションが、最難関である“秀才席”の確保。


「“最難関”って言うより…大吾の場合は」

「“無理ゲー”ですね」


「直紀コラ!進はともかくお前は“バカ席”だろうが!」


無理でもやるしかないんだ。悪の根は絶やさねばならない。


…ん?どこかで同じようなセリフを聞いた気が…まァいいか。


「そうだよ直紀くん!“バカ席”とか、普通に勉強してればまずそんな残念な順位にはならないハズだぞ?」


先生気取りで直紀を諭すユウキちゃんだが、俺の胸も痛い。わざと言ってんのか?この子。



「同じ“バカ席”だから分かるんスよ。真っ向勝負で“秀才席”なんて、ぜっっったいに無理です」



「無理だからって諦めてちゃあの子は最低1年間はあのエロオヤジにセクハラされるんだぞ?ほっとけないじゃないか」



「あぁ…大吾先輩、面食いですもんね」

「直紀。あんな夢見た“最バカ”にはなるなよ?2年までには“普通席”まで上がってこいよ?」



病人を見るような目で俺を気の毒そうに見つめてくる直紀と進。


イヤ、分かってるよ!無理なのは分かってる!俺がバカなのも重々承知だよ!



“最バカ”が“クラス首席”の心配することが、そんなにアホなことか?人として助けてやりたいと思って当然じゃないか!



「フム…お前ら、真っ向勝負以外で日比野が“秀才席”に座るにはどうしたらいいと思う?」



唐突にユウ先輩が麻雀部に向かって呼び掛けた。


「ハイハイ!カンニング、カンニング!」


いの一番に挙手をしたのは、直紀だった。


「カンニングだけじゃあ“最バカ”が“秀才席”には座れないと思うぞ」


進が冷静に考察する。
確かに。席が成績順ということは、俺の回りの連中は全員“バカ”。


そんな奴らの答案を盗み見ても、大して点数アップにはつながらない。



それに、事前にカンニングペーパーなどを用意するタイプも、決して万能ではない。


例えば英単語には適しているが、英作文や和訳には適していないだろ?


ほとんどのテストで満点近くの点数が必要とされる以上、カンニングという手法はあまり実践的ではないと言えよう。