と、いうワケでだ。


2年C組、
日比野大吾(ダイゴ)の─
つまり俺のことなのだが、



俺の1日といえば、おおむねいつもこのような感じだ。



いつもと違うことと言えば、強いて言えば反省文がいつもの6倍あるということか。



冗談じゃあないね、まったく。



原稿用紙と言えど、立派な資源だ。環境破壊の騒がれる昨今、資源の無駄遣いがそれに直結することくらい、教師たちも分からん訳ではあるまい。



それなのに、やれ課題だ、予習だ、反省文だと、やたら紙を使いたがる。こと反省文に至っては、この5日間で20枚だ。半分以上は今日の分だけど。



「地球に優しい高校というものが、なんとか作れんもんかね」



1限が始まるまでの休み時間、机に突っ伏して我が校の自然に対する無頓着さを嘆く。



それを見てくすくすと笑うのは、隣の席の永野啓一。



「大吾の遅刻グセが治れば、ウチも環境先進校として飛躍するかも」



「…耳が痛ぇなァ、それは難しい」



啓一は次の授業の準備を済ませ、シャーペンの芯を入れ替え始めた。俺の話を聞く気なんざこれっぽっちもなさそうだな。



芯を入れ終わると、啓一は胸ポケットからガムを取り出して、俺に放った。



「予習やった?」



「まさか」



啓一の問いに即答して、ガムの包みを素早く開けて口に入れる。



うまっ。



「時間通りに学校に来ることすらままならない俺が、予習なんて出来るわけないだろう」



「何を自慢気に言ってるのよ、あんたは」



前の席の女子生徒が振り向いて悪態をついた。



2年C組、泉アリサ。



「よう、アリサ」



「…とりあえず死んで」



明るめ、短め、髪色と髪型はストライク、だが口の悪さが玉にキズってやつだな。



「あんたに下の名前で呼ばれると寒気するわ。だから死んで。目障り」



「朝っぱらから辛口コメントをありがとよ」



「どういたしまして」



こいつも分からない奴だ。顔を付き合わせりゃあ、まず口をついて出てくるのは「死ね」「目障り」。



俺じゃなかったらとっくに心折れて不登校に追いやられてるよ。



悪い奴ではないんだけど。



「おはよう、泉さん」



「おはよ、永野くん」


ホラ、啓一には普通に接してるし。


笑うとちょっと可愛いし。