G組…F組…
E組…D組…!



「よし!間に合っ…たわぁっ!」



C組の扉を開けた瞬間、凄まじい殺気に包まれた右足が俺の鼻先数センチ、いや数ミリの所へ繰り出された。



尻餅をついた俺の前には、ひきつった笑顔の担任、稲垣先生。K-1選手並みの蹴りを放ったのはこの男のようだな。



「殺す気ですか!」



「あぁ、いっそ死んでくれ!」



直球。思ってても言っちゃいけないんじゃないか?



「貴様の遅刻グセが治ったのも、たったの2日だけか!悪の芽は絶たねばならん。他の生徒に伝染する前に亡き者にしてくれる!」



「ま、待って待って!まだチャイム鳴ってないでしょ!?」



「今日は機材点検でチャイム鳴らないっつったろうがバカタレェ!」



「うぐっ!」



尻餅をついている俺の頭頂部に、稲垣の強烈なかかと落としがヒットした。



「ぼ、暴力反対!教育委員会に訴えますよ!」



「そうか、ではここで口が聞けないようにしておかないとな!」



「すいません、もうしません」



危険回避七つ道具のひとつ、土下座。



「分かればいい。ほい、今日の反省文な」



額を床にこすりつけた俺の前に、ひらひらと原稿用紙が2枚。



「明日の昼休みまでに出しに来ること。いいな」



「御意に」



ピシッと敬礼して、そそくさと最後列の席へ歩く。



と、その前に最前列の窓際席をチラリ。



“クラス首席”の机には、才色兼備の無口少女、東條さゆみさんの姿が。



さっきから俺の方を見てくれていたようで─



まぁ今のくだりはクラス全員が見ていたわけだから別に東條さんが格別俺を見てたってことではないのだが。



俺と目が合った瞬間、物凄い勢いで顔を伏せ、一昨日のようにノートに向かって何か一心不乱に書き込み出した。



何かヘコむな。人見知りなだけだと思うんだが。