「…いやァ、可愛かったな」



東條さんの足音が聞こえなくなると、進がふぅ、とため息をついた。進なりに緊張していたらしい。



「でも、いくら席遠いからってあんな綺麗な人に気付かないなんて、大吾先輩ニブすぎじゃありません?」


離れた机から直紀がからかいの目で俺を見る。ユウキちゃんも、笑いをこらえてるのバレバレなんだけど。



「うるさいなぁ、俺の席からは首席の机に座ってる子なんて豆粒だぞ、豆粒。男か女かすら分からないんだ」



「教室広いしねぇ。あっ、リーチだよ」



啓一め。相槌を打ちながらちゃっかりリーチかけやがって。



「俺もリーチ」



負けじと俺もリーチ宣言。そろそろアガっておきたいからな。



「啓一も後ろの席じゃん。なんで東條さんと仲良いんだよ」



進が手牌と捨て牌を睨みながら、啓一に尋ねた。



「委員会が一緒だからね。あ、それに僕は成績に反映するテストの時はちゃんと勉強するし」



うん。さらっと言ってのける感じがなんかムカつく。間接的にバカにされてるみたいで。



「ふぅん。あ、俺もリーチ」



進もリーチ宣言。



「お前らリーチ早いなぁ」



頭をかきながら牌を引いてくるユウ先輩。そういや、この人も今回アガってないな。



「お、やっときた。ツモ。国士ね」



『ウソォ!!』



教室に二度目の絶叫が響いた。