「ま、これでこの一連の事件も、一件落着ってとこか」


白い歯を覗かせて、ユウ先輩が満足気に笑う。



「今回も結局、ユウ先輩の独壇場でしたね」


「何言ってんだ。俺はお前が言い出したから協力しただけさ」



相変わらず、カッコいいことしか言わないヒトだ。



「みんなもそうだろ。日比野が動かなきゃ、誰も動かなかった。違うか?」



ユウ先輩が、みんなの顔を見回す。俺も見回す。



「そりゃあね」

「まぁな」


啓一と進。


「当然!」

「先輩、カッコ良かったですよっ」


直紀に、ユウキちゃん。


そして、

「…フン」


はは。アリサも。



「そういう意味じゃ、お前が殊勲だ。お前が麻雀部を動かし、お前が東條を助けた。みんなそれで納得してる」



雀牌を片手でもて遊びながら、ユウ先輩が言った。



「もちろん、野球部の連中もそうだ。それでいいだろ?」



「そう、なんですかね」


「そうさ。お前が殊勲だ」



なんか、不意に胸が熱くなった。


「先輩、みんな」


ちょっと涙が出そうになったけど、無理矢理笑顔を作る。



「ありがとう」



麻雀部メンバーは、揃って俺に笑顔を返してくれた。


なんと、アリサも。
はは。明日は雨かな?



と、
不意に携帯電話の着信音。



「あ、ちょっと、スミマセン」


アリサが慌てたようにカバンを探った。


「電話か?」

「はい、そうみたいで…あっ」



ユウ先輩の問いかけに答える途中で、携帯のディスプレイを見たらしいアリサが、表情を変えた。



「もしもし、兄貴?」



そう言いながら、窓際の方へ歩いていく。



「ヘェ、お兄さん居たんだ、泉先輩」



意外そうにアリサの後ろ姿を見詰める直紀。



そうか、みんなは聞いてないんだよな。



アリサに、イケメンでスポーツできて勉強もできる、しかもなぜか俺に似ている兄貴がいるってことに。






…ん?







…ん!!!?