G…
F…
E…
D…


C組ぃ…っ。



そろそろそろっ、と、扉を開ける。担任の稲垣に見付からないように…。



「おはよう日比野」

「う…稲垣…先生」



もうバレてた。



「今日もいい天気だな、オイ?」

出席簿で頭をバシッと叩かれる。

「今日で連続何日だ?」

バシッ。


「先週のテストが終わってから?」


バシッ。


「木」


バシッ。


「金」


バシッ。


「今週の月曜?」


バシッ。


「火」


バシッ。


「そして」


バシッ。


「今日…ですね」
これは俺のセリフ。


「そうだな?」


バシッ。


「何か言うことないのか?」


バシッ。


「…おはようございます」

ゴツッ!!


「痛いっ!!」


あの野郎、出席簿タテで殴りやがった!


「1限に間に合ってるからいいじゃないですか…」


「素直に謝れんヤツは反省文20枚だ」


「すみません」


「よろしい。次はないぞ」


原稿用紙を2枚受け取って、自分の席に向かう。



教室の前の方を眺めると、3列目の上位席に啓一の姿。こっちを振り返って、小さく手を振っている。


さすが。成績が関わる時だけ頑張りやがる。



そこから何席か下位の位置に、アリサの後ろ姿。


ホントだ。
アイツが“バカ席”にいたのは、ホントにミスだったんだな。
日本史で回答ずらしたとか言ってたし。



「あー、そうだ。今日から席変わったから」



そうみたいだな。“最バカ”の俺の席は指定だけどね。



最後尾の廊下側が、“最バカ”の指定席。


つまり、俺の指定席で、


俺が“最バカ”で…、


あれ?



最後尾の廊下側の席には、同じバカ席仲間の湯川が座っていた。


「…え?は?湯川?」


湯川は俺の顔を見ると、恨めしそうに呟く。


「大吾…裏切ったなァ…?」


はい?
え?


ワケが分からん。


慌てて辺りを見回すと、



最後尾だが、窓際の席が2つ並んで空いていた。

…。
ワッツハップン…?