「…とまぁそれは冗談として」


存在自体が冗談みたいな毒舌女が何をぬかすか。



「アンタを嫌いな理由ならあるわ。でも、それは言っても仕方ないコトだし」



ますますワケが分からん。


「言っても直せない部分ってコトか」


なんで俺は真面目に返答してるんだろう。


アリサは俺の顔を見て、ふっと口元を緩めた。



「まァ…そうね。そういう表現に近いかも」



「なんだよ。含みのある言い方しやがって」



「うっさいわね。“最バカ”のクセに。敬語も使えないの?」


「敬語を使う必要性がどこにあった!?」



「ぴぃぴぃうるさい。死ね。腐れ」



なんて口の悪いヤツだ。
俺にだけ。



「“最バカ”だって傷付くんだぞ!腐れは言い過ぎだろ!」


「腐れ腐れ腐れ腐れ腐れ!」


「お・ま・え・な…!!」



ザザッ。
“大吾っ、聞こえる?”



啓一の声が無線機から聞こえてきた。



「取り込み中だ!今からアリサの性根と毒舌を叩き直す!」


“後にして!警備員がまた動き出したんだ!”



「げっ、マジか」


一瞬で頭が冷える。


「また職員室にあがって来るってこと?」



戦闘体勢を解いたアリサが横から口を出す。



“それが…”

ザザッ。

啓一が口ごもると、すぐに別の通信が入った。


“ユウキですっ…”


何か深刻そうな声だな。
嫌な予感。



“警備員さんの話を盗み聞きしたんですけど…「犯人がまだ潜伏している可能性がある」「今度は本館を隅々まで探す」って…ど、どうしましょう”



ふぅむ。
再び大ピンチだ。



“もう警備員は階段を上がって来てる!なんとか逃げて!”


再び啓一。



「ちょ、待てよ、どうやって?退路は塞がれてるんだよな?」



“……”


…もしもし?
おーい、啓一?



“…運、かな?とにかくファイト!”


プツン。



あっ、こら!
具体案を出さずに丸投げすんな!!



「ユウ先輩っ!聞こえてるでしょ!?何かアドバイスを!」



ザザッ。

“…根性だ!アガリ牌は自分でツモって来い!”


麻雀に絡めてうまいコト言おうとしてるけど、


言ってること啓一と全く一緒ですよ!!


プツン。



そんで切るなァ!!