「そうだな。一応調べてみるか」


ヤバい。


見つかる。
100パー見つかる。
死ぬ。



言い訳は?
忘れ物?
肝試し?
かくれんぼ?



ポケットにテスト用紙という爆弾を隠している以上は、見つかったら詰みだ。



そうっと机の隙間からアリサの顔を見た。


アリサは俺の視線に気付くと、にっこり笑って、俺の顔を指差して、口パク。



お前









ふ…
ふざけんな!!



「よし、じゃあさっさと回ろう」


あー…
いよいよ本気でヤバい。
俺の学校生活も終わりか。


もうちょい勉強すればよかったかな。
あぁ、あと、東條さんに謝る機会も欲しかった。
麻雀部、楽しかったなぁ。





ピーン
ポーン
パーン
ポーン…







……は?


「な、なんだ」


警備員たちが、ざわめき出す。



“警備員の皆さん、遅かったですね”



校内放送だ。
それに、なんだ、この声。
変声機でも使ってるような、低い機械的な声。



“心学社学園の秘宝、『ささやきのドラゴンアイズ』、確かに頂戴しました”




……
………なんて?



「ほ、放送室からだ!」


「ホントに侵入者だったんだ!入れ違いになった!」


「放送室に急げ!捕まえるぞ!!」



“我々、怪盗MJBは、決して捕まりません。せいぜい急いで来ることです。繰り返します。警備員の皆さん、遅かったですね。心学社学園の秘宝『ささやきのドラゴンアイズ』、確かに─”



「バカにしやがって!」


「放送室だ!!1階へ急げ!!」



バタバタと革靴を鳴らして、警備員たちが走っていくのが分かった。



再び教室に静寂が訪れる。



「はあぁぁぁぁ…」

覚えず、大きなため息が出た。