「…ありがとうって伝えてくる
これからも支えるからって伝えてくる」


そう言った俺はすぐに家を出た


雨が降っている


さらに心が冷たく感じる

焦り 不安 後悔

込み上げてくる冷たさを
走って走って温めようとする

温まるわけがないのに


そこでふと東堂さんが頭に浮かんだ


東堂さんは両親の死期を
認識できる時間さえなかった


瞬間的な事故だったから
ありがとうの「あ」も
伝えられなかったんだよな


俺 まだ幸せなのか ?


幸せに思って いいんだよな

限りある時間を
大切に思って いいんだよな