先輩は一歩アタシに
近づいてきた。



反射神経が意味なく
作動したのか

後ろに退いた。




「華ちゃんは、俺の事
好きじゃなかった?」


その目に
映っていたのは

確かにアタシだった。


獲物を逃がすまいと
強く見つめる、
ライオンのような目




初めまして先輩を
怖いと思った。





でもアタシは
そんな事に
惑わされたりしない。




「好きじゃなかった」
冷め切った言葉を
浴びせる。





「別に好きじゃなくても
いいから」




そんな言葉で
繋ぎとめようと
するのさえ


目障りだ。



結局、何いわれても
気持ちなんか
1ミリも生まれないし
揺れたりしない。



「嫌です」



先輩はその言葉を
聞くと、
アタシの腕を力強く
握った。




「痛いっ…やだ、」
足掻くアタシを横目に
先輩は
不気味につぶやいた








「華が、離れるなら
俺が引き留める」