私と彼が嘘をつく理由


「琴ちゃん、忍のこと好きなんでしょう?」


お母さんが優しく問いかけてくる。
うんともすんとも言わない私に
お父さんが口を開く。

「君たちは他人なんだ。惹かれあうのも仕方ない。僕が言うのもアレだが、忍は良い男になった。」

お父さんのそのセリフに
クスクスとお母さんが笑って
リビングの重かった空気が
ふんわりとした
軟らかいものになった。