「・・・馬鹿。」
「・・・・・・・・・・・・。」
鳳麻さんは呆れきってしまったのだろうか。
はあとため息をつく。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
紫波さんが心配してくれたことが唯一の救いでした…
「お嬢さん~額が赤いですよ~大丈夫ですか?」
ついでにお客さんも…
「・・・・・・・ふんっ、せいぜい
これからは気を付けてよ。仕事に支障がでたらこまる」
た、鳳麻さんも…?
「気を付けます…」
改めて、椅子に座り直した。
「じゃあ、さっさと着いてきて」
鳳麻さんは立ち上がり、
いずまいをただす。
「それじゃあ、紫波さん
また、明日配達にいきます。辻(つじ)さん、紫波さんに迷惑かけないで下さいね」
どうやら、お客さんは辻さんというらしい。
私も続いて立ち上がる。
「何を言うんですか~
私は紫波さんの神ごとき
手に感嘆してですね~
こうやって通いつめているというのに」
「それはいいんですけど、
時おり、わけの分からない物を持ってきては大変なことになるんですから、
少しは自覚してください」
「何をおっしゃいますか!
あれらは異国からわざわざ運んできたとても珍しいものなんですよ!」
「だから、それが迷惑だって言ってるんです。
前に持ってきた、なんか透明の入れ物に入ってて、蓋を開けたら、かなり臭いにおいのする変な液体!あなたが持ってきたせいで店の中が悲惨なまでにくさくなったんですよ!」
くさいにおいのする透明の入れ物に入った液体?
なんだろ?
「くさいとは結構な物言いですね!あれは、高貴な方達の間で流行っている
ものなんですよ!くさくなんかありません!
においが直接嗅ぐとくさく感じるだけであって、服や体にふりかけると
すれ違う人達皆振り返るようなにおいがほんのりと・・・」
ああ、分かった。これってたぶん・・・
「いいにおい?あんなのが?嗅覚が異国の方々はおかしいんじゃないですか?」
「それは、あなたの方では?あの高貴なにおいの美しさが分からないとは
あなたの美的意識も相当鈍いのだと思いますよ?」
「はぁ!?僕の美的意識が鈍い?意味不明。僕は部屋に置いてある物から生けている花まで
全部こだわり抜いているんだ!馬鹿にしないでくれる!?可笑しいのはあんたの方でしょ!」
蕎麦屋にいる他のお客さん達もいきなり響きだした怒声に驚き、こちらを
凝視している。
はたまた、紫波さんはというと、格子向こうの外を眺めながら煙管(キセル注、昔のタバコ)をふかしていた。
「あの、ぱふゅーむのにおいのよさが分からないほうが時代遅れの低美的意識のあなたに言われたくありません!!」
ぱふゅーむ。
やっぱりあたってた。
香水のことなんだ…
にしても、いつまで続くの・・・この言い合い…