馬鹿と煙

煙草に火を点け、天井に目掛けて煙を大きく吐いた。





「あたしが口出せることじゃないよ、その女の中のひとりだもの」






「なんで知ってるの、他に女がいるって」





「勘、かな。なんて。うちらの出会いがキャバって時点でわかりきってることよ。夕方とかに会ってると、あいつの携帯よく鳴るのよ。営業メールでしょ?あいつ、顔は悪くないし、180以上タッパあるし、仕事も融通の効く不動産。よりによって、あたしひとりに絞るはずないわな。」





飲みきったコロナのボトルを差し出し、バドワイザー、とバーテンへ向けて言った。




差し出されたボトルを受け取ると今度は目も合わせない。



結構いい男だ。








「でも、それだけじゃわからないじゃない。」






「わかる。おんなじ泥棒猫のタチよ。アイツ変なとこ真面目だから、薬指のプラチナ、何処ででも外さないしね。わかってて近付くのよ、不倫女は」






ふーん、と、ナナは何とも言えない表情を見せる。





もう飽きてしまったのだろうか。






少し、楽しませてやろうか。









「セックスも、毎回じゃないしね。」