馬鹿と煙

携帯の着信音は初期設定のまま。



唇の半ば剥がれたリップとグロスを
ティッシュで乱暴に拭いながら通話アイコンをタップする。



「もしもーし」





「寝てた?」





「起きてた」





「早く出てよ」






「ごめん、なに?」






「出てこない?ナナ、明日、休みなの」






あたしの数少ない友人は誘いが唐突で




「んー別にいいけど」







「スッピン?」






「いや、ユウスケがさっきまで居たから‥」






「げっ!まだあの不倫男と付き合ってんの?信じらんない。32だっけ?一回りも年が違う女と嫁がいるくせに!ねぇ、ナナ、電車ないから渋谷まで来てよ、カスミのが家近いんだからさ、渋谷着いたら連絡して。不倫男の現在進行形、聞かせて。じゃあね!」














そして毎回無遠慮なのだ。