馬鹿と煙

口に咥えた煙草。



なぜだか火を点ける気にはならなくて











「‥ふざけた野郎だなあ」





独り、わざわざ言葉にして蔑む。








彼は俗に言う最低男だと思う。




だから毎回、閉め切った部屋で煙草を吸う。
わざと煙草の煙を彼に向かって吐く。


非常識だ。
人によってはマジに怒るだろう。






けれど彼は何も言わない。







彼は煙草は吸わない。



けれど煙草の匂いは好きらしくて











あたしは彼に不平不満は出さない。





でも本当はそんな性格じゃない。








だからこその無言の訴え。









気付いてくれない方が好都合。













だって終わらせたくないから。