「お帰りなさいませ、美鈴お嬢様。」

「…部屋に、戻るわ。」

「かしこまりました。すぐにお紅茶でも、お持ちします。」

「ええ…」

誰にも関わろうとせず、すぐさま自室に戻る美鈴。頭の中では、まだあの名前も知らない男性が、言っていた言葉が駆け巡っていた。そして時に、自分で口を滑らしたのかとも考えていた。

「失礼します、お紅茶をお持ちしました。」

「置いといてちょうだい。」

「かしこまりました。ところでお嬢様、体調崩されましたか?」