だが決して美鈴は、廊下を走ったりしない。後ろに木之本を連れ、ゆっくりと歩く。これが彼女のスタイルだ。

そしてゆっくりと扉が開き、両親に朝の挨拶をする。毎日これを繰り返す。

「お父様、お母様おはようございます。」

「美鈴、おはよう」

「よく眠れた?」

「はい」


美鈴の父である、仁科 克哉(ニシナカツヤ)。彼こそが、仁科財閥をまとめいる。所謂この家のリーダーだ。

母である、仁科 すみれ(ニシナスミレ)。社長夫人はもちろんのこと、有名ファッションブランドを創設者でもある。








そして


ここにはいないが、長男 仁科 彰人(ニシナアキト)。美鈴の三歳上の兄であるが、家にはいない。


「みぃちゃん、今日はどうするの?」

「今日は、あの場所へ行ってみようかと思います。お母様。」

「なら、気をつけて行ってらっしゃい。」

「はい。」

すみれはいつも、美鈴の予定を聞く。そして見送る。



『学校』


そんなの関係ないかのように。


まだ美鈴は、高校三年生だ。

有名私立に通っているものの、学校へは行かないこともしばしばあった。
そして進路は、考えることはあまりない。



そう



未来が決まっているから。