「翔くんのお母様を看ていたよ。紫乃ちゃんも酷い目に遭ったね。」


 先生の優しさに心が揺れ青年の事を深く聞くことが出来なくなった。


「いつか、ご両親との楽しい思い出だけが君を包むから。」


 優しい言葉が嬉しかった。


「薬は…飲んでる?」


 不意に問われ小さく頷く。


「そう、忘れず飲んで。」


「解りました。でも、なんの薬ですか?」


 リハビリ担当の医師と看護師から渡される薬を文句も言わずに飲んでいるが解らない。


「大切な薬だから。」