「…身体……重い。」 口と目は動くのに身体が重く動かなかった。 周りを見渡していると遠くからこちらに急ぐ足音が聞こえた。 「大久保さん。」 先頭の白衣の男性が驚きの中名前を呼ぶ。 「…はい。」 「名前を言えますか?」 「大久保(おおくぼ しの)紫乃です。」 小さくか細く答えた。 「お帰りなさい。」 優しい医師の言葉に自分が生死の境をさまよっていた事を理解した。 「あの…両親は、」 「今は、身体を休めましょう。」