「はい。誠に申し訳ないかぎりです。」


「婚約者と言えど少しは、わきまえのある…ご子息だと思いましたが…残念です。」


 たたみかけるように淡々と話す。


「社長が亡くなり今後の婚約は、どうなりましょうか?」


「…解消せよ、とは言いません。ただ、距離を置いていただきます。」


「解りました。」


 市村は、胸を撫で下ろした。


「しばらくは逢えませんし、俺の許可ナシに面会はありえませんから…よろしいですね?」


「はい。婚約を解消されないだけましです。」