「はい。お互いの両親が決めた婚約です。市村家は、一番の取引先ですから……。」 滝沢の答えにあからさまにイヤな顔をした。 「どうなさいますか、翔さま。」 主の答えを待つ。 「財政状況を確認しろ。俺は、院長と話しをして来る。」 「行ってらっしゃいませ。」 「紫乃、ゆっくり休め。」 優しく額にキスを送り病室を出て行く。 滝沢は、怒れる主人を見送る。 「よくも、俺のモノに気安く手を出してくれたものだ。」 怒りを抑えつつ廊下で呟く。