静かな病室に背の高い青年が入ってきた。 滝沢は、椅子から立ち一礼し席を譲る。 青年は、譲られるまま椅子に座り眠る少女の髪を優しく撫でる。 紫乃は、規則正しい寝息をたてて眠っていた。 「落ち着いているようだな。」 「はい。出るのが少々遅れまして…市村 将大に害されました。お許しを。」 “将大”の名前が出るとあからさまに表情を変え瞳に鋭さが篭もったのを滝沢は、見てしまった。 「“市村 将大”、たしか婚約者…だったな。」