あたしは青ざめた顔で席を移動した。
チラっと、隣を見た。
橘 ハルが、隣にいる……。
う…うわぁ。
なんか、すごい。
眠そうな顔で、机に頬杖をついている。
横に人が通るたび、色素の薄い猫っ毛がふわふわと揺れる。
…綺麗な横顔。
肌が白くて、鼻筋がスっと通っている。
ていうかこの人、結構背が高いんだ。
隣にいると、元々小さいあたしが、更に小さく見える気がする。
…って、あたし!なにこの人に見とれてんの!?
そう思い、あたしは視線を黒板に移した。
そのとき、少し周りに違和感を感じた。
う……うわぁ。女子の視線が痛い…
はぁ、やっていけんのかな……。
この時、あたしは気づいていなかった。
橘 ハルと隣の席になったあたしを強く睨んでいた存在に…。
“唯香”という存在に……。
「美心!やったじゃん!!」
今は昼休み。
ここは、あたしと菜樹ちゃんの秘密の場所。
まぁ中庭だけど…人があまり来ない穴場スポットだ。
「どこが“やった”なのーー??」
「だってあの橘 ハルだよーー!まぁ無愛想だけど…カッコいいじゃん!」
…カッコいいって……。
カッコイイからって、隣の席でいいわけがない。
「…でも菜樹ちゃん!良かったね!!山口くんと隣で!!!」
「え…う、うん」
菜樹ちゃんは顔を真っ赤にさせた。
…山口くん、というのは菜樹ちゃんの好きな人。
山口 レンって名前だったけな。
こっちもすっごいイケメンさん…。
しかも山口くんは、山口グループの御曹司だ。
なんかよく分からないけど、すっごいお金持ちらしい…。
…そして橘、くんといっつも一緒にいる。
すごく対象的な二人。
橘くんはクール。山口くんは、はしゃいでる??
山口くんは、クラスの盛り上げ役というか。
いつも笑っていて、元気な人だ。
そんな感じの2人。
「うわ!ヤバ!もうこんな時間じゃん!!美心、次の授業って体育だよね?」
「あ、そうだ!着替えなきゃ!!」
あたし達は一気にご飯を食べて、中庭を後にした。



