「誰だ!」 俺は草陰に向かって言った。そこから現れたのは、毒蝮の体をした女がたっていた。 「毒蝮・・・お前らの縄張りは北のほうだろう。なぜこんなところにいる。」 俺は毒蝮を睨んだ。 毒蝮は長い舌を出して不気味な笑みを浮かべながら言った。 「そんな怖い顔しないでくださいまし、刃狐館幸祐様。私はただ美味そうな人間の匂いがしたので喰らいに来ただけです。その娘、私にくださいまし。」 女の子は、怯えながら言った。 「わ、私を食べても美味しくなんかありません。」 毒蝮は女の子を見て目を細めた。 「人間の肉は妖の肉よりもうまい。だから食らうのだ!」 毒蝮はそう言うと牙をむき出しにして襲いかかってきた。毒蝮は今の俺の姿では倒せない。この子の目の前で妖になるしか方法がない。 俺は素早く変化すると刀を構え毒蝮の牙を抑えた。 キイン・・・。 刀と牙がぶつかり合う。後ろを振り返ると、女の子は座り込んだまま呆然としている。このままじゃこの子も巻き込んでしまう。どうすれば・・・・。俺がこの場所で毒蝮を斬り殺しも良いのだが、毒蝮の血は妖以外の生き物が触れると毒にやられて死ぬ可能性がある。万が一この子に返り血が一滴でもかかれば・・・。 俺は一歩後ろに下がり硬直状態の彼女をおんぶしてその場から逃れた。 九尾は昔から瞬間移動ができるためそれを使って逃げた。 毒蝮の特性は何でも透視ができること。どんなに入り組んでる場所に逃げても結局見つかってしまう。とにかく俺は女の子を自分の家に運び込んだ。家のお手伝いをしている妖に声をかけた。 「だだいま戻った。父上はいるか?」 「幸祐様・・・それは人間ではないですか?なぜ連れた来たのです?」 俺はお手伝いの妖をきつく睨むともう一度言った。 「父上はいるかと言っている。分かったらすぐに連れて来い。燃やされたいか?」 手の上に狐火を出すとその妖は家の奥に走っていった。しばらくすると父上を連れて玄関に戻ってきた。 父上はびっくりした様子で俺ではなく後ろに立っている女の子を見ていた。 俺は父上に事情を全部話した。そのあと俺はこっぴどく叱られた。俺を叱ったあと、女の子を招き入れ、おまけに部屋まで用意した。 女の子はなぜかここに住むことが決定した。