とても寒い日の朝、ひとりの少女が森に迷い込んできた。                                                      どうやら親御さんと離れてしまったらしい。                                                            その子は泣いていた。森の神様が司ると言われている祠の前にしゃがんで。                                              僕は人間じゃない。九尾の妖狐だ。だから人前には出れない。                                                    でも、このままだとあの女の子が凍え死んでしまう。                                                        どうにかできないものかと妖怪の友達に聞いてみた。                でもみんなはとって食うとかほっときゃいいとか他人事のように言う。                                                確かに僕たち妖には人間の子供一人迷い込んだって関係ない。むしろ、獲物を狙う絶好のチャンスだ。                                                                          僕は決心した。あの子を助けると。でも妖怪たちはみんなやめとけとか、人間臭くなるぞとか言ってくる。                                                                        でも僕はあの子を助けたい。みんなの言葉を振り切って僕は少女に声をかけた。                                            「どうしたの?」                                                                        すると少女が後ずさった。理由はもう分かっている。だって僕は妖怪。狐の尻尾と耳がついているから。                                                                         これは大きくなれば自分の意思で無くしたりもできるらしい。今の僕は人間の年で言うと小学1年生。まだまだ子供だ。                                                                  でも、せめて少女を暖かい場所へ連れて行きたい。どこがいいだろう。                                                後ろから聞きなれた声が聞こえた。僕の父上だ。                                                          「幸祐。何をしている。・・・それは人間の子じゃないか。近寄ってはいけないよ。人間は恐ろしい生き物だからね。ほら、こっちへ来なさい。」                                                      この日僕は初めて父上に反論した。                                                                「嫌です。人間の子でもこんなところに放置しておくわけにはいけないでしょう?父上だって昔母上を助けて結婚したじゃないですか。だから僕も人間の子を助けてあげたいんです。」                                                                             そう、僕の母上は人間。だから僕に流れる血は半分が人間の血で、もう半分は妖怪の血。                                        父上は、難しそうな顔で言った。                                                                 「仕方ないな。ウチへ連れてこい。だがこれだけは約束してもらうぞ。明日にはその村娘を村に返しに行くんだ。そうしないとまた人間たちがこの森を荒らしに来て、焼き払われてしまうからな。」                                                                       こうして僕とこの少女、真白との出会いだった。