「みんな今日はありがと―――――――っ!」
郁馬が叫ぶ。
ファンの子たちの、
声がこだまする。
「今日は、俺たちそれぞれのソロを発表します!まず俺からね!」
いったん、郁馬はあたしたちにウィンクした。
あたしたちはみんな揃って頷いた。
「外崎郁馬で”一瞬”」
郁馬がいつになく真剣に言った。
曲がホールいっぱいに流れ出す。
「♪いつかの帰り道君が近くに感じたよ
いつかの帰り道君と分かり合えた気がしたよ
でも、そう思えたときはいつも一瞬だった
君が一瞬で消えていく気がして
怖くなったあの日を今も覚えてる
大丈夫、そういっていつも隣にいてほしい
僕の前から君が消えていく前に
大丈夫、そう笑って隣を歩いてほしい♪」
気が付けばあたしの目の前は真っ暗だった。
そしてほほがぬれていた。
「おい?」
小声で翔希があたしをつつく。
「どうした?」
「郁馬でも、あんなにきれいな歌うたえるんだなって思ったら、感動した。」
あたしは、素直に感動してしまった。
まるで、あたしみたいだから。
「次、七瀬、準備しとけよ。」
「おっけー。」