部屋に戻り、わざと持たずに置いていった携帯を手に取り、画面を開く。

何通かのメールと、何件かの着信があり、それぞれ一つずつ目を通していくと、十分ほど前の着信に目と手を留めた。


嵯峨 真理子


私の親友の一人だ。



真理子とは中学三年のときに同じクラスだった。

その頃の私は、もう一人の親友である有松由利以外には誰にも自分の面(つら)で接することがなかった。

姉の真似ばかりして上辺だけの人付き合いをしていて、真理子とは仲がいいわけでも悪いわけでもなかった。

今思うと、由利以外に初めて自分の面を見せたのが真理子だったのかもしれない。

もっとも、親友と呼べるような存在になったのは、それからかなりの時間が経ってからだが。