と、自分から声をかけた。そこには、懐かしい笑顔があった。
「おー、美里じゃん、今来たの?」
「違うよ、もっと前からいるよ。全然気づいてくれないんだもの」
「そうか、悪い。こっちで話し夢中になっていて」
「元気そう。ねえ、さっき携帯開いていたの、お子さんの写真?」
「あれ?見てた?」
「うん。見せてよ、わたしにも」
彼は嬉しそうに携帯を開いた。そこには、かわいい男の子が二人。満面の笑みを浮かべていた。
「わあ、じょうくんによく似てる。ねえ、奥さんの写真はないの?」
彼は切り替えて、美人の奥さんの写真を出した。
「わあ、きれい。やっぱじょうくん、面食いだったか」
「おう、俺は昔から美人しか興味ないよ、美里みたいな」
「なーに、それ。もう酔っ払っちゃたの?」
「美里は?子供いるの?」
「うん。娘が3人ね」
「そうか。旦那に、ちょっとやけるな」
「またまたー、そういうこと。17歳の時にもっともっとプッシュして欲しかったよ」
「できるかよ、そんなん。39歳になったから、言えるんだもん」
「そうね、年取ると、お世辞も、口説くのもうまくなるものね」
「かわすのもな」
「17歳、良かったよね」
「うん。楽しくて、馬鹿ぽかったよな、空回りも、遠回りも…」
「コンプレックスも、プライドも、臆病なのも」
「嫉妬も、優柔不断も」
「恋に不器用な自分も。みんな、17歳の象徴だ!!なーんて」
「あの頃に積み重ねた毎日が、俺たちを育ててくれたんだよ。涙も、笑いも、怒りも。だから今がある」
彼はゆっくりと落ち着いた口調で言った。優しい微笑みの中には、あれから21年間、真摯に生きてきた彼そのものが詰まっているように思えた。わたしは、水割りを一口飲んでグラスを置いた。コトリと、氷の転がるいい音。大人になったわたしたちの言葉の端々には、戻ることのない甘酸っぱい香りがいつまでも漂っていた。 END
「おー、美里じゃん、今来たの?」
「違うよ、もっと前からいるよ。全然気づいてくれないんだもの」
「そうか、悪い。こっちで話し夢中になっていて」
「元気そう。ねえ、さっき携帯開いていたの、お子さんの写真?」
「あれ?見てた?」
「うん。見せてよ、わたしにも」
彼は嬉しそうに携帯を開いた。そこには、かわいい男の子が二人。満面の笑みを浮かべていた。
「わあ、じょうくんによく似てる。ねえ、奥さんの写真はないの?」
彼は切り替えて、美人の奥さんの写真を出した。
「わあ、きれい。やっぱじょうくん、面食いだったか」
「おう、俺は昔から美人しか興味ないよ、美里みたいな」
「なーに、それ。もう酔っ払っちゃたの?」
「美里は?子供いるの?」
「うん。娘が3人ね」
「そうか。旦那に、ちょっとやけるな」
「またまたー、そういうこと。17歳の時にもっともっとプッシュして欲しかったよ」
「できるかよ、そんなん。39歳になったから、言えるんだもん」
「そうね、年取ると、お世辞も、口説くのもうまくなるものね」
「かわすのもな」
「17歳、良かったよね」
「うん。楽しくて、馬鹿ぽかったよな、空回りも、遠回りも…」
「コンプレックスも、プライドも、臆病なのも」
「嫉妬も、優柔不断も」
「恋に不器用な自分も。みんな、17歳の象徴だ!!なーんて」
「あの頃に積み重ねた毎日が、俺たちを育ててくれたんだよ。涙も、笑いも、怒りも。だから今がある」
彼はゆっくりと落ち着いた口調で言った。優しい微笑みの中には、あれから21年間、真摯に生きてきた彼そのものが詰まっているように思えた。わたしは、水割りを一口飲んでグラスを置いた。コトリと、氷の転がるいい音。大人になったわたしたちの言葉の端々には、戻ることのない甘酸っぱい香りがいつまでも漂っていた。 END
