「……英司?」 そっと小さく声をかけると、窓ガラス越しに満月を従えた英司が振り返る。 青い月明かりを浴びた、艶やかな黒髪が妖艶に光った。 その姿がなんだか幻想的で、胸がざわざわする。 「どうしたの?こんなとこに呼び出すなんて……」 無駄に広いこの空間に、ちょっとだけビクビクしながら窓際の英司に近づいた。 思わず小声になったあたしに、英司はクスリと笑うと同じように小さく囁いた。 「うん、菜帆を抱きたくて」 「え?」 ……ん? 「えええええッ!!?」